アブダクション 第三の推論法

 今学期、知り合いの読書会に参加しています。読でんでいる本は向井周太郎著「デザイン学 思索のコンステレーション」です。デザインは僕の興味の中心ではないのですが、昔日立製作所の丸山 幸伸 がおっしゃっていた”デザイン的思考”というものが気になっていたことと、主催者である知り合いが非常に面白い人で、彼がどんなことをするのか見ていこうと思って参加しました。ここでは、その読書会の一部でも書いていこうと思います。ちなみに下記の文章はほとんどレジュメの写しなので、問題がありましたら連絡ください。

 アブダクションとは、チャールズ・サンダース・パースの用語であり、「演繹」、「帰納」に加わる第三の推論法。アブダクションとは仮説形成と訳され、発見、想像の論理と呼ばれる。

例「化石が発見される。それは例えば魚の化石のようなもので、しかも陸地のずっと奥で見つかったとしよう。この現象を説明するために、われわれはこの一帯の陸地はかつて海であったに違いないと考える」(【パースの記号学】)

 つまり、それ自体は実態的根拠はないが、そのように仮定するとすべてがうまく説明でき、問題を解くことができるようなフレームを仮説として形成することが、アブダクションという推論の手続き。

 引用終わり

 工学的発想であるならば、まずそこの地質を調査して、何かしらの根拠を見つけるものですが、アブダクションの場合、有効な前提をとりあえず置くところから始まる。この前提、あるいは場を新しく形成するのがデザイン的思考の要素だと考えます。
 これは丸山さんがおっしゃったことなのですが、「ある駅で待ち合わせをし、電車で向かっているが遅れそうである。相手に連絡したいが電話番号しかわからず、電車の中では使えない」という問題があるとき、工学的思考の人は、その問題の原因は電車、または携帯にあると考え、電車の中に通話ボックスを作るか、携帯にCメールといった電話番号で使えるメールを開発するという発想をするのですが、デザイン的思考の人は、こんな考え方をする。「駅の待ち合わせ場所に大型スクリーンを用意し、そこにネットを通じていろいろな書き込みができるようにする」。まぁ、これが有効かどうかは置いといて、このようにデザイン的思考の人はまったく演繹できでない前提を用意して、問題を解決しようとするそうです。